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天井クレーンの点検中にドラムとトロリフレームとの間にはさまれ

発生状況

この災害は、顧客先工場でクラブトロリ式天井クレーン(つり上げ荷重10.2t、 質量4.8tのリフティングマグネット装着) の定期自主検査の作業中に発生したものである。
災害発生当日、被災者は部下と二人で、同工場にある3 機の天井クレーンを点検する予定になっており、午前9 時頃から1 時間ほどで1 機目の点検を終了し、午前10時頃から2機目の天井クレーンの点検を開始し、クレーン運転士から依頼されていたブレーキの調整作業に取り掛かった。クレーンの運転は、顧客事業場の運転士が行い、被災者は部下とともにクレー ンガーダに上がり、部下に制御盤の作動確認をさせ、被災者はクラブトロリに上がってブレーキを調整する作業を行っていた。調整作業中、被災者が巻上げドラムを背に屈みこんだところ、腰につけていた安全帯のロープが回転中の巻上げドラムに巻き込まれ、被災者がドラムとクラブトロリのフレームとの間にはさまれて被災した。

被災者は、安全帯のロープ部が機械や設備等に引っ掛からないような工夫を行わないで作業を行っていた。また、作業場所が運転室から見えず、クレーン運転士と被災者との間の合図・ 連絡が適切に行われなかった。さらに、安全な作業のための標準作業手順書の作成や作業者への安全衛生教育も行われていなかった。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 巻上げドラムを回転させた状態で、その近くでブレーキの調整作業を行ったこと。巻上げドラムを回転させながら、近づいて作業を行ったため、安全帯のロープ部がドラムに巻き込まれた。

2 クレーンを運転する運転士と被災者とがお互いに見えず、適切な合図・ 連絡ができない状態で、ドラムを回転させ調整作業を行ったこと。

3 安全な作業のための標準作業手順書の作成と作業者への安全衛生教育が行われていなかったこと

対策

同種災害の防止のためには, 次のような対策の徹底が必要である。

1 巻上げドラムの回転中にその近くで調整作業を行わないこと。巻上げドラムを回転させる必要がある場合は、点検作業者に合図し、巻上げドラムから離れさせること。
2 クレーンの点検作業では、適切な合図や連絡などが行えるようにして実施すること。運転士と点検作業者がお互いに見えない場合は、合図や連絡を行う者を配置して作業を行わせること。
3 安全な作業のための作業手順書を作成した上で、これをもとに作業者への安全衛生教育を行のこと。
(転載:クレーン誌52巻 2014年10月号)